アーカイブ | 11月 2017

睡眠薬べルソムラで、金縛り状態に

久しくブログを休んでいたので、文芸部の後輩、香川うどんが心配してメールを寄越しました。卒業して47年経ちますが、いつまでも優しい後輩です。大学は学祭が終わって祭りの後。準備に忙しかった学生たちが教室に戻ってきて、前回のタナトロジー(死生学)は230名を超える受講生で教室がいっぱいでした。

さて、わたくし。長年、睡眠薬を飲んでいます。もう10年以上になりますかね~。ベンゾジアゼピン系のレンドルミン(商品名)という薬です。デパスとかマイスリーもこの種の薬。よく効きます。パソコンの強制終了みたいに突然眠ってしまいますが、作用時間は比較的短く、夢を見ることもなく、寝ざめはすっきりして私には良く合っています。夜中の2時3時に就寝する私にとって、確実な睡眠を約束してくれる睡眠薬は必需品でした。ただ、この薬には、依存性や耐性があると言われており(当初は、副作用がないという触れ込みで発売されたのに)、主治医から新しい薬への変更を勧められました。その名もべルソムラ「美しい眠り」。2014年から発売されている、オレキシン受容体拮抗薬と呼ばれる睡眠薬です。耐性ができない、自然な眠り、リバウンドしない、と良いことずくめのように言われますが、ほんとかいな?レンドルミンみたいに、後になって、あの薬は実は問題があったということになるのかもしれません。

睡眠には「レム睡眠(REM)」と「ノンレム睡眠(non-REM)」の2種類があり、睡眠中はこの2種類の睡眠が交互に繰り返されます。レム睡眠はいわば、脳が起きていて、身体が眠っている状態。ノンレム睡眠は脳は眠っていて、身体が起きている状態です。睡眠中、脳と身体が交互に休むわけです。で、夢をみるのは脳が起きているレム睡眠中。私が飲んでいるレンドルミンはレム睡眠を抑えるので夢を見ません。

新しい睡眠薬べルソムラはオレキシン受容体拮抗薬、つまりオレキシンのはたらきをブロックし、自然にまぶたが重くなって眠くなる作用を持っています。で、夢を見ます。

初めてべルソムラを飲んだ夜、恐ろしいことが起こりました。寝付いたかどうかという状態のとき、突然、寝室の窓が明るくなり、光が差し込んで窓枠がガタガタと揺れ始めました。地震?火事?と跳ね起きようとしたのですが、どうしたわけか身体が動かないのです。意識ではもがいているのですが、身体はマネキン人形みたいに、ただゴロンと布団に転がっているだけ。そのうちに、誰かが寝室のドアをどんどん叩き始め、恐怖でもうパニック状態です。目を開けると天井には両手をかざした魔物のような黒いシルエットが、光の中をグルグルと回っています。とにかく部屋中が騒々しく、ドンドン・バタバタ・ガラガラと工事現場のような状態。家族を呼ぼうとするのですが声が出ません。どのくらい経ったのか、渾身の力を込めて両手両脚を踏ん張るとすっと起き上がれました。ハァハァと肩で息をしながら辺りを見回すのですが、寝た時の暗い静かな部屋に戻っていました。私は金縛り状態になっていたのです。べルソムラのせいだと思い当たりました。明け方の4時。その晩は眠るのが怖くて、夜が明けるまで起きていて、薬の効果が無くなった頃、やっともう一度眠った次第です。

精神科や睡眠障害の専門医にその話をすると、「ほう、出ましたか!」と、とても興味深そうな目になります。べルソムラはその作用機序から、頻繁に悪夢や金縛り状態が生じるのではないかと懸念されていましたが、その後、ほとんどそんな報告はなく、何となく良い睡眠薬として使用されているのだそうです。

私の連れ合いも、べルソムラを処方されて試しましたが、夜中から朝目が覚めるまで、 何とも言えない頭痛に悩まされたと言っていました。少なくともここにふたり、べルソムラの副作用が顕著に出た患者がおります。製薬会社さん、調査をお願いします。で、わたくし。眠剤を少しずつ減量し、最終的には使わずに眠る練習をしています。