アーカイブ | 3月 2019

源平桃、今年も開花。

毎年、楽しみにしている源平桃の季節が今年もやって来ました。一本の木に、紅白の花が咲き競う様子を源平合戦になぞらえて命名されたのでしょうか。典雅な名前です。ここ10年ほど、わが庭のささやかな竹林の前で華やかに開花し、家族を喜ばせてくれます。小ぶりな桃の実に似た実をつけますが、食べられません。

この花が開くと、春になったと思います。花の季節はすぐに過ぎ去り、私も連れ合いも、猫も、確実に年老いて別れが近づいていると感じる、無常の景色でもあります。

 

 

 

 

 

いまさらですが、「鬼平犯科帳」が面白い。

時代小説が好き。それも、とびきり勧善懲悪の物語が好きです。池波正太郎の「剣客商売」は全巻読破しました。今、電子書籍で読んでいるのは「鬼平犯科帳」シリーズ。全24巻のうち11巻目を読み終えたところです。江戸中に名を知られた鬼の平蔵こと、長谷川平蔵は、放火や強盗など凶悪犯を取り締まる火付盗賊改方長官。自身も若き日、訳あって放蕩無頼の日々を過ごし、人の気持ちの裏も表も知り尽しています。凶悪な強盗達を無敵の立ち回りでバッタバッタとなぎ倒し、「火盗改メの長谷川平蔵であるぞ。神妙にお縄を頂戴しろ!」。朗々と呼ばわる決めゼリフ。「いよっ、待ってました」と私はスカッとして心の中で拍手喝さい。

電子書籍の鬼平犯科帳は1巻5~600円。24巻読了すれば1万数千円かかります。ブックオフで購入したほうが安上がりだと気づき、12巻からは310円で古本を購入することにしました。年金生活者は、本代にも気を遣います。

さて、池波正太郎の文章は雑味のない透明度の高いもので、センテンスが短く無駄がありません。簡潔な描写の中に、景色や時間がくっきりと浮かび上がってきます。先日、日暮れ時に福岡城(舞鶴城)跡の掘沿いの道を歩いていると、「鬼平犯科帳」の一節を思い出しました。

「西空の果てに、血のような夕焼の色がわずかに残っていたけれども、これが夜の闇に変わるのは間もなくのことだ。その暗くなった道を、旅の男は前田原をぬけて行くことになる」(第8巻)

福岡城堀沿いの柳並木の道は、江戸時代の残り香が漂っているようで、私は子供の頃から好きなのです。もう少し西に歩くと、睡蓮が川面に繁り、清らかな純白の花を咲かせる場所があります。以前、この堀の左手の城内に国立病院がありました。私が最初の甲状腺がんの手術を受けた病院でもあり、母の膵臓がんが見つかったところでもあります。母の担当医から病状の説明を聞くために、病院へ急いでいる時、堀を渡る橋の下一面に、白蓮が浄土の花のように美しく咲いていたのを思い出します。