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ネットショップ で手に入る「呪いの藁人形セット」

ネットショップで何でも手に入る時代ですが、これは又、ビックリ商品。「藁人形セット」です。国産藁(!)で作った藁人形。呪いの五寸釘。それを打ち込むための小石。ケガをしないように軍手もついて、三千数百円。Amazonで販売されていました。原価に比べて、とんでもなく高いのに、買う人がいるのですかね。多分、若い女性が、ドロ沼の不倫関係に悩んでいる友人に、ジョークで贈ったりするものなのでしょう。

江戸時代に流行った恨み釘の儀式。丑三つ時に、女性がたった一人で白装束をまとい、頭には白鉢巻か、鼎を逆さに被り、櫛を口に咥えて神社の裏手に参るのだそうです。鬼気迫る出で立ちですよね。人に見られてはならず、話しかけられても返事をしてはならず、コッソリと闇に紛れてやって来て、御神木に藁人形を五寸釘で打ち付けるのだそうです。それを7夜。呪いの言葉を胸の裡で念じながら。姑に虐め抜かれている嫁とか、夫の別宅に赤ん坊がうまれた不妊の妻とか、怨みつらみを抱えながら、昼間は日常の顔をして生きている女たち。このまま死んだら、幽霊になるかもしれないというほどの深い怒りや妬みや悲しみの塊を抱えて八方塞がり。そこで、恨めしい相手を藁人形に見立て、病気やケガを負ってほしい部分に、五寸釘を打ち込むのだとか。京都の清水寺の隣の神社には、五寸釘の穴がたくさんある神木が祀られているとのことです。神木といえば老木です。痛ましい自然破壊はいけません。でも、江戸時代の身分差別や女性差別は、不満を口に出すと、家を追い出されたり、斬り捨てられたりする恐れがあります。夜陰に紛れて、相手の不幸を念じながら、コッソリ恨み釘を打ち付ける儀式。見ているのは神サマだけです。痛いのは御神木のみ。神仏ならば、許してくれるでしょう。その昔の、ウップン晴らしの卓越した方法だったと思います。

最近、私、朝起きると指が痛いのですが、誰か藁人形の先っぽに釘打ってない?

(上の写真は、ネットショップのものを借用しました)

カラスの子が庭に迷い込む

夕方、帰宅すると、庭にハシブトガラスの子供がいました。連れ合いがウッドデッキを補修しているのですが、その材木の上にうずくまって不安そうに空を見上げています。体長25センチほど。まだ尾羽がなく丸い体型です。最近、うちの庭によくカラスがやって来ます。子ガラスも自分で迷い込んだのか、親と一緒に飛んで来て、力尽きたのか分かりません。

連れ合いは「どうする?水が飲みたいのかもしれない」と心配そうです。私は、老猫メロンを動物病院に連れて行った時、待合室に貼り紙があったのを思い出しました。野鳥のヒナを見つけたら、触らないで、そのままに。と書いてありました。必ず親鳥が近くにいるのだそうです。人間が余計な手出しをすると親鳥が警戒して寄りつかず、助かるものも助からないかも、と連れ合いに言うと、保護する気まんまんだったので残念そうでしたが、そっと見守ることになりました。

親や仲間のカラスたちが、近くの屋根や電線の上に10羽近く集まって、ナントカちゃんがおっこっちゃった、あー、どうしたものか、とカァカァ大騒ぎをしています。子ガラスは庭から玄関へチョンチョンと歩いて移動し、閉まった門扉に体当たりして外へ出たがっています。

私は外に出て、上から見張っている大人のカラスたちに襲われないように、さりげなく、郵便受けを覗いたりしながら、門扉を全開して家に戻りました。二階から見ていると、子ガラスは門を出て車寄せに暫くうずくまっていましたが、頭上の親鳥の指示でしょうか、家の前の細い道をチョコチョコ歩いて行きました。数軒先のお宅の庭に、それはそれは大きな木があって、鳥が巣を掛けているのが見えます。カラスの巣かもしれません。でも、この子ガラスは、まだあんな高いところまで飛ぶことはできないでしょう。親鳥や近所のおばさんカラスたちは、落ちたヒナを草むらにでも隠して餌を運び、飛べるようになるまで地上で育てるのでしょうか。

翌日も、子ガラスが家の前の道を、頼りなげに歩いていました。見上げると大人カラスが数羽、電線の上から私を警戒しながら見下ろしています。もし、猫に襲われそうになったら、飛び降りて来て追い払うのでしょうが、交通事故に遭わないか気がかりです。でも、野鳥は自然に任せるしかありませんよね。頑張れ!カラスの親子。


「鬼平犯科帳」長谷川平蔵は片えくぼ

半年周期で鬱状態を繰り返す、厄介な気質の私。今年は1月から4月まで鬱期でした。このブログを読み直すと、昨年も、梅雨入りまで鬱期だったようです。最悪の気分を何とか持ち直そうと自助努力をする中で、池波正太郎の「鬼平犯科帳」シリーズに助けられました。

子供の頃から、月光仮面やスーパーマン、ウルトラマンなど、勧善懲悪のヒーローものが大好きでしたが、彼らは人間が変身したもので、ロボット風な正義の味方。生身の人間の、生き生きとした魅力はありません。江戸の火付け盗賊改め方長官、長谷川平蔵宣以(のぶため)の元ヤン的キャラは人間味あふれ、個性的で魅力的です。こんなに小説の主人公に夢中になったのは、中学時代の「赤毛のアン」、高校時代の「シャーロック・ホームズ」以来です。

映画やドラマと違って、小説の場合は、お気に入りの主人公の姿形は、読者それぞれが想像するしかありません。鬼平は、どんな見た目だったのでしょうか。テレビドラマでは鬼平役は2代目中村吉右衛門でした。年の頃は40代始め。剣術一刀流の名手で、名刀、粟田口国綱を携え、極悪人相手の立ち回りも鮮やかで、颯爽としてカッコいい。愛妻家で人情家で理想の上司です。

一体、どんな様子の良い男だったのでしょうか。作者の池波正太郎さん自身が編纂した鬼平辞典ともいうべき「鬼平犯科帳の世界」によると、中肉中背の穏やかな風貌、笑うと片えくぼが出来る可愛げのある見た目の中年男性のようです。でも、問答無用で犯人を切り捨て、鼻を削ぎ落とし、捉えた罪人に拷問も辞さない残酷なところもある厳しい役人でもありました。若い頃は盗みの手伝いもした無頼な鬼平の言葉は「悪を知らない者に悪を裁けるか?」というものでした。この人、実在の人物だということです。