アーカイブ | 3月 2020

第7回 日本一短い自分史

おせいさんへの感謝状 (秀作入選)

 築60年のわが家には、大工仕事が好きな夫が物置を改造して作った書庫がある。6畳ほどの書庫には、研究者だった私達の専門書よりも小説や随筆、画集の方が多い。本棚の一角は可愛らしい装丁の田辺聖子さんの著書が占めている。20代初めに「感傷旅行」を読んで以来の、私はおせいさんの大ファンなのである。これまでの71年の人生で、どれほどその著書に助けられてきたことだろう。

 33歳で甲状腺がんと糖尿病を発症し、ウツウツと過ごしていた時、「貸しホーム屋」(『おせいさんの落語』)という短編に大笑いして気分が変わった。貸しホーム屋から「家族」を借りることになった独身男。瀟洒な家と美人妻・賢い子の富裕家庭セットよりも、庶民的な妻に「ねえ、あんた」と呼ばれる雑駁なアパート暮らしの方が好みだ。やがてその平穏さにも飽きて、男が選んだのは「生活苦コース」だった。12人家族で、赤ん坊、病妻と寝たきりの年寄りの世話に追われ寝る時間もない。極道の義弟は彫りもんちらつかせて金を無心する。泥沼の人生苦。だが、この苦しみの中のじっくりした味わいが堪えられない。そうか、わが「病苦コース」も案外滋味豊かなのかも・・と思い返した次第だ。53歳で甲状腺がんが再発した。その時にぴったりのアフォリズムは「人生は神サンから借りたもの」(『楽老抄~ゆめのしずく』)であった。人の命終に当たりやって来るのは、阿弥陀如来ではなく、ガラの悪い神サン。借金取りのごとく「オーラオーラ、貸したもん返やさんかい」とすごむ。死について品良く思いめぐらしていた私は、妙に納得したのだった。夫との関係が危機に陥ったことも何度かあるが「求婚旅行」の昭子と平三夫婦のように、その都度やり直せて今がある。 

 田辺聖子さんは、私の人生の分岐点で、ものの分かった関西の叔母さんのように、説教抜きで、その場その時にいちばん必要な言葉を贈ってくれた。心から感謝している。(了)

伊丹市立図書館の田辺聖子さんの著書コーナー
兵庫県伊丹市に住んでおられた聖子さんは、この図書館の名誉館長でいらしたとのこと。
昨年(2019年)、91歳で逝去されました。

本人のひとり言  子供の頃から、ものを書いたり読んだりするのが大好きだった私ですが、ここ数年、本も読まず、文章の書き方も忘れてしまったような、心許ない思いで過ごしていました。筋トレならぬ筆トレのつもりで始めたのが、エッセイや短編小説の小さな賞に応募することでした。昨年1月から今年の3月までに、4篇のエッセイと2篇の短編小説に応募しました。小説はあえなく落選。ですが、エッセイは2篇が入選しました。(あと2篇はまだ発表なし)。そのひとつが伊丹市立図書館主催の「日本一短い自分史」(800 字)です。お題が「田辺聖子さんと私」でしたから書きたいことは山ほどあるのですが、原稿用紙2枚以内という短かさに悩みました。こうして読み返してみると、最初の段落が良くない。大事な字数を不要な説明に使っています。もっと何度も推敲すればよかったと後悔しきり。 応募数274篇。最優秀作は1篇。秀作の3篇のうちに入れていただいたことは、ありがたく嬉しいです。

楽しいこともしよう!

友人から「うちでお昼を食べながらお喋りしましょう」と誘われました。このところ「不要不急」の外出を控えていて、気分がウツウツしていた私。気が合う友人3名でのお喋りを楽しみに勇んでお出かけ。マスクをしてエタノール持参です。市営地下鉄は連休中日なのに乗客はまばら。友人が用意してくれたランチ。豆乳のポタージュ、カルパッチョと菜の花のお浸し。ヒジキのサラダ、全粒粉のパスタ(春キャベツと海苔)。デザートはもう1人の友人のお土産…抹茶入りわらび餅。
全て、とても美味しかった!
ランチをよばれながらひとしきりお喋りした後、友人宅近くの福岡市植物園へ散歩。ソメイヨシノ🌸がまだ咲いていないせいか、福岡市民は自宅で過ごす人が多いのか、人出が少なく静かです。
2時間喋ってもまだ物足りない私達。園内のカフェテラスでお茶をしながらまたもやお喋り。
眼下に南区の街並みが見えます。明るい午後。
話題は、最近読んだ本や映画のこと。亡くなった橋本治さんや田辺聖子さんの、「ひとり追悼読書会」をしたこと、若い頃見たクロード・ルルーシュ監督のフランス映画、「男と女」の53年ぶりの続編の話。団塊世代の私達は、同じ時代を生きて来た人生の同期なので共通の話題が尽きません。
お茶はハーブティー。カップの中には、隣の動物園にいるキリンさんが入っています。みかんの皮を切り抜いたもの。ローズマリーとローズヒップの香りが優しいハーブティーです。
カフェの売店で、同じハーブティーを買いました。夕方遅くまで語り合い、
閉園間際の清掃中の人気のない動物園を通って帰りました。
動物園は最近建て替えられて、たいそう立派にきれいになっています。
動物たちは夕食なのか寝る時間なのか、部屋に戻っていて姿が見当たりません。
ただ、コツメカワウソの部屋の前を通りかかると、
1頭のサービスの良いカワウソさんが出て来て、
ロープを咥えてクルクル回る芸をわざわざやって見せてくれました。
なんて楽しい1日だったことでしょう。

コロナと精製水の関係

ご無沙汰している間に、日本のみならず世界中が「パンデミック」で、大変なことになりました。愛知や北海道の感染者数は増加していますが、ここ福岡では、3名の感染者が出たとの発表後、幸いにして増加したとの報道はありません。でも安全を期して、運営しているボランティア団体の活動を5月まで休止することにしました。高齢で糖尿病患者の私は、不要不急の外出を控え、家の中で片付け物や常備菜作りに精を出しています。

店頭からトイレットペーパーやティッシュペーパーが消え、わが家のテッシュ類も底をついて来た頃、そうだ!と思い出しました。テラスの下に、隠し持って?いたことを。床下からコンテナを引き出すと、中にテッシュが 12箱。トイレ紙が 12ロール。トイレ紙は洗面所の棚の奥にもゴロゴロありました。災害に備えて数年前に備蓄していたものでした。この際、使い切って新しい物と交換しておこう。

ところで、連れ合いは、寝ている間、いびきで時々呼吸が止まる「睡眠時無呼吸症候群」です。呼吸に合わせて、機械で鼻から空気を送り込むCPAP 治療をしています。これを始めてから随分体調が良くなりました。人工呼吸器みたいなCPAPの機械。病院を通してのリースですが、加湿するのに精製水が必要です。精密機器なので混じり物のある水道水やミネラルウォーターは機械を傷めます。日頃は、薬局で1本88円の精製水(以下の写真)を購入していたのですが、コロナ騒動を境に、薬局の棚から掻き消えてしまったのです。

何軒も尋ね回って、やっと理由がわかりました。エタノールを同量の精製水で割って、消毒液を作るためだそうです。ほら、お店の入り口などに置いてある手指の消毒液です。コロナ騒動でエタノールとセットで精製水が売れてしまい、当分、入荷の予定はありません、とのことでした。精製水は普通の家庭では必要ないですもんね。

自宅で精製水を作れる機械があるとのことで、ネットで調べて購入しました。水道水を上から注いで、濾過して純水を作るという至って簡単な構造。価格は1万円ほどです。カートリッジ交換の必要があり、それが結構高いのですが、年間通せば半額近くはお得。うちのように、精製水が必需品の家庭には良いお買い物だと思います。加湿器を年中使う家庭にもお勧めです。探せば、世の中、何でもあるのですね。